筑波大学微分幾何学セミナー
2020年度 講演一覧

2020年度春学期

新型コロナウィルス感染症の影響でセミナーは開催しませんでした。

2020年度秋学期

オンラインで開催します。 参加を希望される方は微分幾何学のメンバーに相談してください。

10月6日 (火) 15:15~16:45 Zoom 前田 瞬 氏(島根大学)
ある種の3次元リッチソリトンと山辺ソリトンの分類について
概要: R. S. Hamiltonは1980年代にリッチフロー,山辺フローの概念を導入した。 リッチソリトン,山辺ソリトンはそれらの自己相似解として現れる。 本講演では, Petersen-Wylie により導入された rectifiable と呼ばれる仮定のもと, 3次元安定リッチソリトンに対して得られた分類,及び, divergence-free なコットンテンソルの仮定のもと,3次元山辺ソリトンに対して得られた分類を紹介する。
10月7日 (水) 15:15~16:45 Zoom 梶ヶ谷 徹 氏(東京電機大学・工学部)
非コンパクト型エルミート対称空間の同変実現
概要: 非コンパクト型エルミート対称空間M=G/Kを、Mの接空間にK-同変に埋め込む一つの方法を、K-作用の極性を用いて与える。応用として、Harish-Chandra埋め込みと呼ばれる有界領域への正則埋め込みおよびDi Scala-Loi-Roosの構成した標準的シンプレクティックベクトル空間へのシンプレクティック微分同相写像を再構成する。さらに、Harish-ChandraおよびDi Scala-Loi-Roos埋め込みをそれぞれ、K-作用のセクションをセクションに移す一意的な正則およびシンプレクティックK-同変埋め込みとして特徴付ける。また、それらの同変埋め込みによって、全測地的複素部分多様体や実形を含むM内のある特殊な全測地的部分多様体のクラスが、接空間内の線型部分空間として実現されることを示す。時間が許せば、コンパクト型エルミート対称空間に対する同種の問題についても触れたい。本講演の内容は、橋永貴弘氏(北九州高専)との共同研究に基づく。
10月13日 (火) 15:15~16:45 Zoom 中村 聡 氏(筑波大学・数学域)
ケーラーアインシュタイン計量の存在問題に関するサーベイ
概要: ケーラーアインシュタイン計量(KE計量)の存在問題は複素幾何学における中心的問題の1つであった. 2015年Chen-Donaldson-SunやTianは代数幾何学的な概念であるK-安定性がKE計量の存在性と同値であると証明した. 幾何学的偏微分方程式の可解性が代数幾何を用いて特徴付けられ興味深い. 本講演では,KE計量に関する基本事項の紹介と,特に,KE計量の存在性からK-安定性がどのように従うのかを,ケーラー計量全体の空間における測地線の理論を用いて紹介する. 最後に,自身が最近取り組んでいるカップルドKE計量の研究も紹介したい.
10月22日 (木) 15:15~16:45 Zoom 佐々木 優 氏(筑波大学・数理物質科学研究科)
G_2/SO(4)のMorse関数と極大対蹠集合
概要: コンパクトリーマン対称空間において定義される,大対蹠集合とホモロジーにはMorse関数を通した関係があることが一部の例で知られている. 例えば対称R空間においては,対称R空間を標準埋め込みしたときの高さ関数で,その臨界点集合が大対蹠集合となるようなMorse関数の存在が知られている. また,特殊ユニタリ群や例外型コンパクトリー群G_2などの対称R空間ではないコンパクトリーマン対称空間においても,そのようなMorse関数の存在が知られている. 本講演では,非対称R空間である例外型コンパクト対称空間G_2/SO(4)において,臨界点集合が大対蹠集合となるようなMorse関数を具体的に構成する.
10月28日 (水) 15:15~16:45 Zoom 奥田 隆幸 氏(広島大学)
対称R空間の大対蹠集合に定まる距離推移グラフ構造
概要: 対称空間上の対蹠集合および大対蹠集合の概念は Chen--Nagano [Trans. Amer. Math. Soc.(1988)]により提唱され, 現在でも盛んに研究が行われている. 大対蹠集合から全空間である対称空間の情報がどれぐらい引き出せるかということについて考えたい. よく知られている事実として対称R空間の大対蹠集合は共役を除いて一意であり, その濃度は全空間である対称R空間の Z/2Z 係数ホモロジーの次元の総和と一致する[Takeuchi, Nagoya Math. J.(1989)]. 本講演では対称R空間の大対蹠集合に「最も近い二点は辺で結ぶ」という操作によりグラフ構造を定めると, 距離推移グラフと呼ばれる非常に性質のよいグラフになることを紹介する. また距離推移グラフ上の調和解析と関係する各種パラメータと, 全空間である対称R空間の各種幾何学的なパラメータの比較について, これまでに分かっている観察結果を紹介する. 本講演の内容は北九州高専の栗原大武氏との共同研究に基づく.
11月4日 (水) 15:15~16:45 Zoom 森本 真弘 氏(大阪市立大学・数学研究所)
ヒルベルト空間内の対称性をもつ極小固有フレドホルム部分多様体
概要: 有限次元リーマン多様体内において,特殊な対称性をもつ極小部分多様体が知られている.例えば,鏡映部分多様体,弱鏡映部分多様体,オースティア部分多様体,アリッド部分多様体は,いずれも特殊な対称性をもつ極小部分多様体である.本講演ではこれらの概念を,ヒルベルト空間の固有フレドホルム部分多様体(C.-L. Terng) に対し定義・拡張する.そして,平行移動写像を通して,無限次元ヒルベルト空間内に特殊な対称性をもつ極小固有フレドホルム部分多様体が多数構成されることについて,これまでに得られた自身の研究結果や,最近得られた新たな研究結果を紹介する.
11月16日 (月) 15:15~16:45 Zoom 北澤 直樹 氏(九州大学)
具体的な多様体上の具体的な折り目写像と多様体の位相や可微分構造
概要: 可微分多様体上に必ずしかもたくさんある良い可微分関数である Morse 関数の特異点は、離散的に現れ、特異点から多様体のホモロジー群やいくらかのホモトピーの情報がわかるという話、いわゆる Morse 理論は 20 世紀前半にはすでに確立されていた。 今回この高次元版である折り目写像を利用して多様体の位相や可微分構造をとらえるという、1950 年代の Thom や Whitney の次元 2 以上の多様体から平面への良い可微分写像の研究に始まる話について、例えば 1990 年代以降の佐伯修氏佐久間一浩氏らによる活発な研究を解説する。講演者の研究として、
1. 具体的な多様体上に折り目写像を構成するという基本的で重要だが難しい問題への挑戦と結果。
2. 1 の研究を、 1960 年代の代数トポロジー微分トポロジーの中心的題材で代数的抽象的にかなり理解された高次元単連結閉多様体の世界のより幾何的で構成的な理解、他対称性が高いとか良い幾何構造を有する多様体の世界の同様の理解の進展に繋げようという試みの現状とこれから。
について紹介したい。
12月8日 (火) 15:15~16:45 Zoom 佐々木 優 氏(筑波大学・数理物質科学研究科)
例外型コンパクトリー群F_4と関連する対称空間の極大対蹠集合
概要: 例外型コンパクトリー群F_4の極大対蹠集合は,Griess(1991)により代数群の方法を用いて分類されているが,新しく対称空間の方法を用いることで独自に分類ができたのでこれを紹介する. またF_4は,例外Jordan代数の自己同型群として実現されるが,この実現を用いて極大対蹠集合の具体的な表示を得ることができたのでこれも紹介する. F_4から得られるコンパクト型リーマン対称空間は,FI型・FII型の2種類がある. FII型はCayley射影平面と呼ばれるコンパクト対称空間であるため,その幾何的実現や極大対蹠集合はよく知られている. 一方でFI型については,その幾何的実現や極大対蹠集合についてはまだよくわかっていない. 本講演では,FI型の幾何的実現ならびに極大対蹠集合の分類ができたのでこれを紹介する. また,FI型の極大対蹠集合を考える問題は,例外Jordan代数におけるある種の組み合わせ論的な対象を考える問題に帰着することがわかったのでこれも紹介する. 時間があれば,最近講演者が導入した対蹠集合の連結性を用いて,F_4ならびにFI型の極大対蹠集合の連結性を判定し,連結性から得られるグラフも紹介したい.
12月11日 (金) 15:15~16:45 Zoom 橋永 貴弘 氏(北九州高専)
3次元リーマン多様体の余次元1局所等長埋め込み
概要: あるgenericな仮定のもとで, 3次元リーマン多様体が4次元ユークリッド空間に局所等長埋め込み可能となるための(リーマン多様体の曲率などの)内在的量による必要十分条件について紹介する. またその応用として3次元リー群上の左不変計量や3次元リーマン多様体上のwarped product 計量の場合の余次元1局所等長埋め込みについて得られている結果を述べる.本講演の内容は広島大学の阿賀岡芳夫氏との共同研究に基づく.
12月21日 (月) 15:15~16:45 Zoom 田中 真紀子 氏(東京理科大学)
非連結コンパクトLie群の極地
概要: 昨年11月に微分幾何学セミナーでいくつかの古典型コンパクト対称空間の極大対蹠集合の分類について講演した。そのときに扱わなかった古典型コンパクト対称空間の極大対蹠集合の分類を行う際には、これらの対称空間の非連結コンパクトLie群の極地としての実現を利用する。連結コンパクトLie群の極地についてはChen-Naganoの研究でよく知られている。本講演では、非連結コンパクトLie群の極地について、その具体的表示と性質および具体例について述べる。本講演の内容は筑波大学の田崎博之氏との共同研究に基づく。
1月5日 (火) 15:15~16:45 Zoom 田丸 博士 氏(大阪市立大学)
A commutativity condition for subsets in quandles --- a generalization of antipodal subsets
概要: 我々は最近,カンドルおよび対称空間内の部分集合に対して「s-可換」という然るべき可換性 条件を導入し,その研究を行っている.ちなみに s-可換性は, 対蹠集合の一般化になっている.本講演では,s-可換部分集合の概念を導入した動機や背景について解説し,また現時点で得られれている極大 s-可換部分集合の分類を紹介する.関連する問題についても触れる予定である.本講演の内容は, 主として久保亮氏, 長鋪美香氏, 奥田隆幸氏との共同研究に基づく.
1月15日 (金) 15:15~16:45 Zoom 山田 澄生 氏(学習院大学)
楕円型変分問題としてのアインシュタイン方程式とその応用
概要: アインシュタイン方程式の導出の直後(1917)にH・ワイルはその厳密解であるシュバルツシルト計量がR^3上の一つの調和関数で決定されることを示した。それ以降、適当な時空の対称性の条件の元で、アインシュタイン方程式は調和写像を介した変分問題(シグマモデル)として認識されてきた。本講演では、M.KhuriとG.Geinsteinとの共同研究である軸対称性を持つ5次元定常時空の構成法を紹介する。特に4次元においては現れない5次元時空内のブラックホールの多様性について、新しく得られた例を用いて解説する。
1月22日 (金) 15:15~16:45 Zoom 栗原 大武 氏(北九州高専)
グラフ・デザイン理論の立場からのユニタリ群上の大対蹠集合について
概要: 対称R空間上の大対蹠集合は共役を除いて一意であることがTanaka--Tasaki (2013) などの結果により知られている。この大対蹠集合に「最も近い二点は辺で結ぶ」という操作によりグラフ構造を定めると、グラフの様々な不変量と対称R空間の不変量が対応することが、最近、奥田隆幸氏(広島大学)との研究で分かってきた。 この講演では、特にユニタリ群U(n)とその大対蹠集合の関係について述べる。U(n)は対称R空間の構造をもつリー群であるが、対称R空間であることを忘れると両側不変計量の入れ方にかなりの自由度がある。そのため、「最も近い二点は辺で結ぶ」という操作で大対蹠集合にグラフ構造を入れる際には、両側不変計量の取り方が重要になる。実は、U(n)を対称R空間を導くような両側不変計量こそが、グラフの不変量とU(n)の不変量の一致を導く計量であることを紹介する。またU(n)上の大対蹠集合をデザイン理論の立場から見ても興味深いことも紹介したい。
2月5日 (金) 15:15~16:45 Zoom 佐藤 雄一郎 氏(東京都立大学)
擬リーマン空間形や光錐内の超曲面の双対性とその応用
概要: 擬リーマン空間形内の超曲面は様々な幾何学者によって良く研究されている. 一方で,光錐内の超曲面は共形平坦擬リーマン多様体と密接な関係があることが知られている. 擬球面,擬双曲空間そして光錐内の超曲面を考えるとき,三つの双対性が存在し,これを超曲面の双対性と呼ぶことにする. 本講演では,palindromic超曲面の概念を導入し,超曲面の双対性によって無限小の対称性が移り変わることを示す. そこには,加法的性質と乗法的性質の対比が見られる. 更にリーマン幾何学への応用として,単位球面内の二重調和超曲面の研究に新たな知見を与える. それにより単位球面内の極小でない二重調和超曲面は等質なもの(の開部分集合)に限られるだろうという Balmuş-Montaldo-Oniciuc予想に対する部分的解決を与える.

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管理: 田崎博之 
更新日:2021年1月28日